こんにちは。新潟市中央区弁天橋通のかんだ整骨院、院長の神田です。
「赤いわけでもないのに、指の第1関節(爪に近い関節)を使うと痛い」「ちょっとぶつかるだけでズキッとする」「家事で使うほど痛いから、瓶のフタや洗濯ばさみがつらい」——そんなお声を、50〜70代の女性からよく伺います。
秋は手仕事や家事が増えやすく、体の歪みや姿勢のくせ、そして年齢とともに変化するホルモンバランスの影響も重なって、症状が目立つ季節でもあります。この記事では、いわゆる「へバーデン結節(手の変形性関節症)」を疑うポイントと、毎日できる対策をやさしくまとめました。病名の決定は医療機関で行われますので、ここでは“見極めの目安”としてお読みください。
原因とメカニズム
使うと痛い・ぶつかると痛いという特徴は、爪に近い**DIP関節(第1関節)**の変化と関係していることがあります。関節の軟骨は年齢とともにすり減りやすく、周囲の骨や靱帯が硬くなることで、こぶのような“結節”が触れるようになることがあります(へバーデン結節)。日本手外科学会の解説でも、中高年の女性に多く、痛み・腫れ・変形が起こる病態として説明されています。
さらに、
- 繰り返しの負荷:ビンのフタ開け・強い握り込み・指先つまみ動作の多用は、関節への機械的ストレスを高めます。
- 季節・生活リズム:家事・園芸・手芸など“手を酷使する時期”は症状が強まりやすい印象があります。
- ホルモンバランス:閉経前後の女性に多いことから、女性ホルモンの変動が関与すると指摘されています(病態の中心はあくまで変形性関節症です)。
専門的には「手の変形性関節症」の一型で、DIP関節(へバーデン)、PIP関節(ブシャール)など部位で呼び分けます。炎症が強い“ぶり返し期”は赤みや熱っぽさを伴い、ぶつかる刺激で痛みが増します。落ち着いてくると痛みは弱まり、使うときの違和感とこわばり、小さな変形が気になる段階へ移ることがあります。非薬物療法(保護・運動・自己管理)は、海外ガイドラインでも基本に位置づけられています。
放置リスクと誤解の解消
痛みがあるのに「そのうち慣れる」と放置すると、使い方の癖が固定され、他の関節(親指の付け根や手首)に**負担の“逃げ道”**が生まれがちです。
よくある誤解を、やさしく訂正します。
- 誤解①:「骨盤や背骨を一度“リセット”すれば指も治る」 → 指の第1関節の変化は局所の変形性関節症が主体です。全身のバランス調整は痛みの感じ方や使い方の改善に役立つことはありますが、一度で元に戻すといった断定は避けましょう。
- 誤解②:「痛みは我慢して使い続ければ強くなる」 → “使い過ぎ”は炎症期の悪化要因です。使い方の工夫と休ませ方のセットが大切です。
- 誤解③:「温める・冷やすはどちらか一択」 → 炎症が強い赤み・熱感がある時は冷却、落ち着いている時のこわばりには温めが向くことが多いです(個人差があります)。
自分でできる対処法
指先を守る“持ち方”に変える
– 目的:DIP関節への局所ストレスを減らし、「使うと痛い」を和らげる。
– 手順:1) つまみ動作は親指と人差し指の先だけで挟まず、指腹全体や道具の太い柄を使う。2) ビンのフタは滑り止めマットや開栓器具を併用。3) 買い物袋は手のひら全体で掛け、指先に食い込ませない。 - 注意点:急に全部を変えようとせず、よく使う動作から1つずつ。 - 所要時間目安:日中の動作ごとに都度意識(1回10〜30秒の工夫)。
温め+ゆっくり曲げ伸ばし(炎症が落ち着いている時)
– 目的:こわばりをほぐし、姿勢や体の歪みから来る余計な力みを減らす。
– 手順:1) ぬるめの湯(40℃前後)に手を3〜5分浸す。2) 指先からゆっくり曲げ伸ばし(痛みは5/10以下で)。3) 仕上げに手の甲と手のひらを各10秒なでる。 - 注意点:赤み・熱感がある日は冷却を優先(保冷材をタオル越しに5分程度)。皮膚疾患のある方は温冷刺激に注意。 - 所要時間目安:1回5〜7分、朝または就寝前に。
夜だけソフト固定で“ぶつかる痛み”を減らす
– 目的:睡眠中の無意識な指の曲げ伸ばしや、寝具へのぶつかり痛を軽減。
– 手順:1) 市販のソフト指サポーターや肌に優しいテープでDIP関節を軽く保護。2) きつく巻かず、血色や感覚をチェック。3) 朝は外し、温め→ゆっくり運動で切り替える。 - 注意点:しびれや青白さが出たら中止。糖尿病や末梢循環障害がある方は専門家に相談。 - 所要時間目安:就寝中のみ(まずは1〜2週間試して様子を見る)。 ※ 痛みが強い/腫れが急に増えた/熱感が強い/外傷後の痛みは、整形外科で評価を受けましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. どれくらい通えばよいですか?
A1. 炎症が落ち着いている時期は、まず週1回の調整と使い方の練習から始め、家でのセルフケアが身についたら隔週〜月1回へ。急な腫れや熱っぽさが強い時は、整形外科と併行をおすすめします。ガイドラインでも**非薬物療法(教育・運動・関節保護)**が基本とされています。
Q2. 費用の目安は?
A2. 当院は自費です。初回9,800円、2回目以降7,000円が目安です。検査や投薬が必要と判断した場合は、連携医療機関の受診をご案内します(医療費は各医療機関の基準)。
Q3. どんな人に向いていますか?
A3. 「できるだけやさしい施術で、使い方の工夫やセルフケアを身につけたい」「バキバキしない方法で体全体の姿勢や力みも整えたい」という方に向いています。神経の反射を活用したソフトな施術で、関節周囲のこわばりや使い方の癖に穏やかにアプローチします。
Q4. いつ受診(病院)を優先すべき?
A4. 急な腫れ・強い赤みと熱感、外傷後の激痛、しびれや指が動かない、急速な変形などは、まず整形外科での評価をおすすめします。へバーデン結節自体の診断や、薬・注射・装具の選択は医師の専門領域です。
まとめ
- 「使うと痛い」「ぶつかると痛い」第1関節は、へバーデン結節(手の変形性関節症)のサインの一つかもしれません。
- 使い方の工夫(関節保護)、温冷の使い分け、ソフト固定と休息は、国内外の指針でも基本に位置づけられています。
- 不安をあおらず、できる範囲で毎日の小さな工夫を積み重ねましょう。迷ったら遠慮なくご相談ください。
【監修:柔道整復師 神田博行】
参考文献
- 日本手外科学会 患者向け資料「ヘバーデン結節」PDF(症状・診断・治療の概説)。
- EULAR recommendations: Management of hand osteoarthritis(非薬物療法・装具・教育・運動など)。
- NICE guideline NG226: Osteoarthritis in over 16s – Visual summary(運動・教育・自己管理・外用薬の基本介入)。


