こんにちは。新潟市中央区弁天橋通のかんだ整骨院、院長の神田です。
「アルツハイマーは歩くとリスクが低下すると聞いたが、膝に違和感があって歩き続けるのが不安」というご相談を、このところ50〜70代の方から多くいただきます。健康のために歩きたい気持ちはあるのに、膝の前や内側がツンと痛む、階段で不安、長く歩くとズキズキする——そのジレンマ、よくわかります。
最近の長期観察研究では、1日3,000〜7,500歩の範囲で歩数が多いほど、特にアルツハイマーの前段階にある方で「タウ」蓄積の進みが緩やかで、認知・日常機能の低下もゆっくりになる傾向が示されました。ただし約7,500歩/日付近で効果は頭打ちの可能性もあります。研究は観察研究で、因果関係の確定には追加の試験が必要です。
原因とメカニズム
**「アルツハイマーは歩くとリスクが低下すると聞いたが、膝に違和感があって歩き続けるのが不安」**という状態を分けて考えると、対処の道筋が見えます。
まず“歩くこと”そのものは、国内ガイドラインでも**高齢者は“速歩など中強度の身体活動を1日合計40分程度”**を目安として推奨され、歩数の目安として約6,000歩/日が紹介されています。無理のない範囲での歩行は、体力・血流・代謝・気分の維持に役立ちます。
一方、膝の違和感は、
- 太ももの前側(大腿四頭筋)やお尻(中殿筋)のこわばり・筋力低下、
- 歩幅の大きさや猫背など姿勢の癖、
- 体重・段差昇降・下り坂などの負荷条件、
- 変形性膝関節症の初期変化(年齢とともに起こりやすい) といった要因が重なって起きやすくなります。とくに**“ストライドを大きくして速く歩く”**は膝前面に負担をかけやすいので、やや狭い歩幅・背すじを保ち目線は10m先といったフォーム調整で負担を軽くできます。
痛みがある日は自転車・水中ウォーキングなど膝にやさしい代替運動へ切り替える選択も有効です。関節に過度な衝撃を与えず、心肺機能や筋力を保てます。
放置リスクと誤解の解消
膝の違和感を放置すると、痛みを避けるための“かばい歩き”→筋力低下→さらに痛みの悪循環に入りやすくなります。
よくある誤解として、
- 「完全に休むべき」:痛みが強い急性期を過ぎたら、“痛みをみながら”適切な強度で動くことが回復につながります。
- 「一度の矯正で骨盤を“リセット”すれば解決」:体は日々の使い方で変化します。姿勢・筋力・歩き方の積み重ねが大切です。
- 「10,000歩を毎日達成しなければ意味がない」:前述の研究では3,000〜7,500歩で十分な利益が示唆され、>7,500歩での上乗せは頭打ちの可能性があります。自分の膝に合わせて“適量”を守りましょう。
自分でできる対処法
1. 痛みを指標にした“段階的ウォーキング・プラン”
- 目的: 認知面のメリットをねらいつつ、膝に負担なく歩数を積み上げる。
- 手順: 1) まず3日間、現在の平均歩数を把握。2) その数値から**+500歩/週を目安に増やす(例:3,000→3,500→4,000…)。3) 24時間後の痛みがNRS※で3/10以下なら継続、超える日は−500〜1,000歩**戻して様子を見る。
- 注意点: 階段・下り坂・長時間の立ちっぱなしは増悪しやすいので配分に注意。腫れ・熱感・引っかかりが出る場合は受診を。
- 所要時間目安: 1日20〜40分の合計歩行から。最終的には3,000〜7,500歩/日に収めれば十分です。 ※NRS:0(痛みなし)〜10(最強の痛み)
2. 膝にやさしい“フォーム微調整”
- 目的: 一歩ごとの膝前面ストレスを減らし、違和感の出にくい歩き方に。
- 手順: 1) **歩幅は“やや狭め”**にし、足は体の真下に落とす。2) 背すじ→あご軽く引く→目線10m先。3) ピッチ(歩数/分)を少し上げ、ドスンドスン踏み込まない。
- 注意点: 競歩のような大股や“つま先着地の癖”は膝前面に負担。フラットに静かに着地。
- 所要時間目安: 5分のフォーム練習→15〜20分の本歩行。
3. 痛む日は“代替運動+ミニケア”
- 目的: 有酸素の習慣を切らさず、関節の負荷を抑える。
- 手順: 1) 自転車または水中ウォーキングへ置き換え。2) 終了後に太もも前後のやさしいストレッチを各20〜30秒。3) 就寝前にアイス・ぬる湯交代は避け、安定姿勢で休息。
- 注意点: 強い痛み・腫れが続く日は運動量を思い切って引き下げる。
- 所要時間目安: 20〜30分/日、週2〜3回から。
時間帯の工夫: 朝は5分の関節ほぐし→短時間歩行、日中はこまめな立ち上がり、就寝前は呼吸を整えるリラックスで交感神経の高ぶりを鎮めましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. どれくらいの期間で変化を感じますか?
A1. 個人差はありますが、2〜4週間の“痛みをみながらの運動+フォーム調整”で「歩ける時間が増えた」「違和感が軽い日が出てきた」と感じる方がいます。無理は禁物です。
Q2. 通院頻度の目安は?
A2. 初期は週1回程度でフォーム・関節の状態・筋反射の評価と調整、その後は隔週〜月1回でメンテナンスという流れが多いです(症状により変わります)。
Q3. 費用の目安は?
A3. 当院は自費制です。初回9,800円、2回目以降7,000円が目安です。
Q4. どんな方に向きますか?
A4. 「歩く習慣を続けたいが膝が不安」「認知面の観点からも運動量を確保したい」方に。神経の反射を活用したやさしい施術で可動域や使い方を整え、マッサージ的な“その場しのぎ”やバキバキ矯正は行いません。必要に応じて医療機関受診もご案内します。
まとめ
- 歩くことは認知・日常機能の維持に役立つ可能性が示され、3,000〜7,500歩/日の範囲で十分なメリットが期待できます(観察研究)。
- 膝の違和感は、歩幅・姿勢・筋力・環境要因で増減します。フォーム調整と段階的な増量がカギです。
- 痛む日は代替運動(自転車・水中)で習慣を切らさず、無理のない範囲で続けましょう。
歩きたくても膝が不安でお悩みの方は、当院の治療がお役に立てるかもしれません。ご相談くださいませ。
【監修:柔道整復師 神田博行】
参考文献
- Yau et al. Nature Medicine (2025). “Physical activity as a modifiable risk factor in preclinical Alzheimer’s disease.”(長期観察で3,000〜7,500歩の利益と約7,500歩でのプラトーを示唆)。
- 厚生労働省(2023)『健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023』「高齢者は中等度強度40分/日」「歩数の目安 約6,000歩/日」等。
- 公益社団法人 日本理学療法士協会『シリーズ7 変形性膝関節症(患者向け手引き)』:自転車・水中ウォーキング等、膝にやさしい運動の実践ポイント。
- 膝の専門医サイト「膝に優しいウォーキングのコツ」(姿勢・歩幅・視線などフォームの注意点)。


