こんにちは、新潟市中央区弁天橋通のかんだ整骨院、神田です。
今回のは、日頃ご相談を多く受ける『腰椎椎間板ヘルニア』についてご紹介します。
腰痛だったり、脚の裏が引っ張られるように痛かったり、お尻の筋肉が痛かったり、脚がビリビリとして違和感が強く痛かったりと、多岐にわたる症状で日常生活が思うように過ごせないケーズもあります。
本当に辛いことです。
「もしかして椎間板ヘルニアかも…手術しかないのかな?」と不安に感じている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ご安心ください。馬尾神経障害や、急速に進行する重度の運動麻痺など、緊急手術が必要な特殊なケースを除けば、腰椎椎間板ヘルニアの多くは、手術をせずに改善する可能性を秘めています。
今回は、なぜ保存療法でも症状が寛解するのか、そして世界中でどのような保存療法が実践されているのか、最新の学術論文に基づきながら、その意義を深掘りしていきましょう。
驚くべき人体の機能 なぜヘルニアは手術なしで良くなるのか?

「ヘルニア」と聞くと、飛び出した椎間板が神経を圧迫し続けているイメージを持つかもしれませんが、実は私たちの体には、そのヘルニアを自然に治癒させる素晴らしい力が備わっています。
腰椎椎間板ヘルニアの多くは、自然経過で症状が改善すると考えられています。特に、飛び出した椎間板の組織(髄核)が**自然に吸収される「自然吸収(regression/resorption)」**という現象が、1984年以降、多くの研究で報告されています 。
驚くべきことに、大きく飛び出したヘルニア(突出型や遊離型)ほど、自然吸収されやすい傾向があることが示されています 。例えば、「巨大ヘルニア」(椎間板腔の50%以上がヘルニア化したもの)の患者さんでも、約20%から60%が保存療法後に椎間板の吸収と症状の改善を経験しています 。MRIによる追跡調査では、ヘルニアのサイズが平均で64%も縮小し、多くが6ヶ月以内に元のサイズの3分の1程度にまで縮小することが示されています 。
この自然吸収のメカニズムは完全には解明されていませんが、飛び出した髄核の水分が徐々に失われたり、炎症反応によって体が異物と認識し、マクロファージなどが吸収したりするなどの仮説が提唱されています 。
つまり、多くのヘルニアは、体の持つ自然な回復力によって、時間とともに症状が和らぎ、最終的には寛解へと向かう可能性があるのです。
世界が実践する保存療法
腰椎椎間板ヘルニアの初期治療として、保存療法は世界的に広く推奨されています。進行性の運動麻痺や馬尾神経症候群といった緊急性の高い症状がない限り、まずは保存療法から始めるのが一般的です 。
ある大規模な研究では、症状のある腰椎椎間板ヘルニア患者277,941人のうち、97%が保存療法で成功し、最終的に手術を受けたのはわずか3%だったと報告されています 。
これは、保存療法の有効性を示す非常に強力なデータと言えるでしょう。
保存療法の驚異的な成功率と国際的な視点

前述の通り、腰椎椎間板ヘルニアの患者さんの約60%から90%が保存療法で回復するとされています 。特に、ある大規模なコホート研究では、97%の患者が保存療法で成功し、手術に進んだのはわずか3%であったという結果は、保存療法の有効性を強く裏付けています 。
手術は、短期的な痛みの緩和や機能改善において、より迅速な効果をもたらすことが示されています 。しかし、長期的な視点(1年以上)で見ると、手術と保存療法の間で統計的に有意な差はほとんど見られないという研究結果が多数報告されています 。
つまり、手術は「早く楽になる」というメリットがある一方で、長期的な「治癒」という点では、体の治癒力を活かす保存療法と遜色ない結果をもたらすことが多いのです。
腰椎椎間板ヘルニアの手術率は、国や地域によって大きく異なります 。これは、医療システムの違い、診療ガイドラインの遵守状況、医師の診療パターン、患者さんの期待など、様々な要因が複合的に影響していると考えられます 。
しかし、どの国においても、保存療法が初期治療の「門番」として機能していることは共通しています。患者さんが自身の状態について十分に理解し、保存療法の可能性を信じて積極的に取り組むことが、不必要な手術を減らし、より良い長期的な結果につながる鍵となるでしょう 。
当院での腰椎椎間板ヘルニアに対する取り組み
実は、痛みやしびれの原因は椎間板ヘルニアだけではありません。筋肉や関節の問題など、他の要因でも同じような症状が出ることがあります。
そのため、「ヘルニアにしかない症状」というものは存在しません。
残念ながら、多くの医療機関で「腰痛」「椎間板ヘルニア」といった診断が安易に下されていると感じることがあります。
実際に当院を受診される方の中にも、他院で「単なる腰痛」と言われた方が実はヘルニアだったり、逆に「ヘルニア」と診断された方にヘルニアがなかったりすることも珍しくありません。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか?
それは、痛みやしびれといった感覚症状は、体の外からは見えづらく、原因が複雑に絡み合っていることがあるからです。
患者さんの話を聞き、画像診断だけでなく、症状が出る状況や時間帯、全身の状態などを総合的に判断することには極めて重要でと考えます。
ですから、専門医で一度も検査をされず当院へ来院された場合、問診・徒手検査で?が付いた際は専門医での検査をお願いすることがあります。
当院が考える体の歪みの機序

当院では、腰椎椎間板ヘルニアなどの症状が、以下のメカニズムで起こると考えています。
1. ストレスや疲労による体の抑制
日常生活でストレスや疲労が蓄積すると、私たちの体は防御システムとして「安全装置」を作動させます。これは、無理な活動を避けるための生体防御反応であり、病気の兆候ではありません。
この働きによって、背骨を支える**インナーマッスル(深層筋)**への活動信号が抑制され、その働きが制限されます。
また、自律神経のバランスが変化することで交感神経の働きも抑制されます。なんとなく気分が乗らなかったり、体を動かしにくいといった感覚につながることもあります。
この制限された防御システムの状態は、条件が揃えば「自然とリセット」されますが、リセットされない状態で活動してしまうことが、さまざまなお体のお悩みに繋がってしまいます。
2. 体の歪みと血行不良の発生
この状態が続くと、無意識のうちに体の動きが制限され、本来のバランスが崩れて体の歪みが生じます。いわゆる『姿勢が悪い』ということです。
体が歪むと、血管が圧迫されて血行が悪化し、筋肉に十分な酸素や栄養が行き届かなくなります。
3. 症状の発生
血行不良により、筋肉に疲労物質が溜まりやすくなり、特に負担のかかっている箇所の回復が遅れてしまいます。これが、腰椎椎間板ヘルニアをはじめとする様々な症状につながっていくのです。
当院では、単に痛みを和らげるだけでなく、この根本原因である「体の歪み」を整えることで、症状の改善と再発予防を目指しています。
患者さん声
腰椎椎間板ヘルニアの診断を受け、当院で回復されたお声をご紹介します。

仕事上、腰痛持ちで、他院で治療を受けていました。2008年に起き上がれないほどの激痛でMRIを取ったら、L5 S1の腰椎椎間板ヘルニアと診断を受け、痛み止めと湿布をもらい過ごしていましたが、一向に回復する様子が見られず、そんな時に知人の紹介で神田先生に出会いました。その時の先生の言葉「絶対に良くなります」にすがり、仕事を1ヵ月休業して通いました。日々痛みの具合が良くなり、1ヵ月後には介護の仕事へ復帰し、今では大好きなスノーボードの競技を続けられています。あの時、先生に出会うことがなければ、今の生活はないと思うと本当に感謝しています。
最後に

腰椎椎間板ヘルニアは、多くの人にとってつらい症状を伴いますが、その多くは手術なしで改善する可能性を秘めています。体の治癒力を信じ、適切な保存療法を根気強く続けることが、痛みのない生活を取り戻すための第一歩となります。
もしあなたが腰椎椎間板ヘルニアの診断を受け、治療法に迷っているなら、まずは信頼できる医療機関で、保存療法の選択肢についてじっくり相談してみてください。そして、ご自身の体と向き合い、最適な治療法を見つけることが何よりも大切です。
最後に、当院でも腰椎椎間板ヘルニアへでお困りの患者さんのサポートを行なっております。遠慮なくご相談いただけたら幸いです。
【監修:柔道整復師 神田博行】