新潟市中央区弁天橋通の かんだ整骨院、院長の神田です。
楽しかったゴールデンウィーク(以下 GW)も終わり2週間ほどが経ちました。例年ながらこの頃は
- 「休み中は平気だったのに、仕事に戻った途端に腰が痛む」
- 「朝ベッドから起き上がるのもつらい」
といったご相談が急増します。
季節の変わり目や大型連休後に腰痛が増える現象は、国内外の疫学調査でも報告されており、心理社会的ストレスと生活リズムの乱れが複合的に関与すると考えられています。
そのような、GW 後に腰痛を訴える方が多い理由を
- 自律神経
- メンタルヘルス
- 活動量の急変
という三つの観点からご紹介いたします。どうぞ最後までご覧ください。
1. 連休中のレジャー疲労と活動量のギャップ

1-1 休暇モードで増える “週末戦士” 現象
普段デスクワーク中心の方が、GW 中に登山や DIY、大掃除など突発的に高負荷の活動を行うと、腰椎を支える多裂筋・腸腰筋に過剰な伸縮ストレスがかかります。海外では “Weekend Warrior(週末戦士)” と呼ばれ、急性腰痛や再発腰痛のリスクを 2〜3 倍に高めると報告されています。
1-2 「動 → 静」の急ブレーキ
レジャーなどで普段より頑張った連休が終わると、一転して長時間の座位・PC 作業中心の生活に戻ります。この急激な切り替えも腰椎に影響します。
スウェーデンの整形外科医アルフ・ナッケムソン氏の研究では、椎間板内圧を直立時=100 とした場合、
- 座位:140
- 前かがみ:275
まで上昇すると示されています。長時間の座位や不良姿勢は椎間板への負担を増やし、腰痛の要因になり得るというわけです。椎間板の内圧が大きく変化すれば、背骨を支える筋肉が過緊張し、その周囲の筋群も疲弊しやすくなります。
したがって、座位での正しい姿勢を保つこと、そして前かがみ姿勢や重量物の運搬時に注意することが腰痛予防につながります。
2. 脳の疲労と自律神経のアンバランス

2-1 “脳ストレス” とは何か
GW 中は移動計画、渋滞、家族サービスなどで脳が情報処理と感情調整にフル稼働します。近年、これを「中枢性疲労(central fatigue)」と呼び、脳波や脳血流で可視化する研究が進んでいます。中枢性疲労が蓄積すると、脳は防御系のシステムを優先し、エネルギー節約のために身体活動を抑制するモード(いわゆる“巣ごもり”状態)へ切り替わります。
2-2 抑制モード → 無理な活動 → 交感神経優位
巣ごもり状態が優先されているにもかかわらず、GW 明けには仕事・家事・学校など動かざるを得ない日常が待っています。無理に活動すると交感神経が優位となり、末梢血管が収縮して筋肉への酸素供給が低下。酸欠状態の筋線維は乳酸や発痛物質を放出し、さらに筋緊張を高める悪循環に陥ります。慢性腰痛患者では安静時にも交感神経活動(皮膚電位・心拍変動指標)が亢進し、痛みと強く相関することが報告されています。
2-3 メンタルヘルスとの相互作用
交感神経優位はセロトニン・ドーパミンなど気分調整ホルモンの分泌リズムを乱します。
- 「休みが終わった憂うつ」
- 「仕事についていけるか不安」
といった感情がさらに交感神経を刺激し、気分の落ち込みと腰痛が並行して悪化するパターンが典型的です。
3. 環境変化と “遅れて出る” 身体不調

3-1 4 月からの新環境ストレスが表面化
新年度に職場異動や進学・進級を経験した方は、GW まで“緊張の糸”を張りつめがちです。連休で一旦ほぐれた糸が仕事再開で再び引き締められると、ストレスホルモン(コルチゾール)がスパイク状に上昇し、筋緊張と炎症反応を促進します。これが GW 明け特有の“遅れて出る不調”です。
3-2 睡眠リズムの崩れも見逃せない
夜更かし・朝寝坊が続くと、睡眠ホルモンである メラトニン の分泌リズムが乱れます。メラトニンはセロトニンを材料に生成されるため、昼間の気分にも影響を及ぼし、眠りとメンタルの乱れが腰痛を助長しかねません。
4. 腰痛を防ぐセルフケアと治療のすすめ

4-1 クールダウン期間の三本柱
- 30 分座ったら立って伸びる
- 帰宅後 10 分の軽い散歩
- 就寝 1 時間前のぬるめ入浴と腹式呼吸
これらは交感神経優位を鎮め、副交感神経(リラックス)へ切り替える基本です。
4-2 仕事中の “マイクロモビリティ”
- 椅子に座ったまま腰や体を前後、左右に揺らす
- 足首を上下に 10 回ずつ動かす
たったこれだけでも下肢静脈ポンプが働き、腰椎周辺の血液が心臓へ戻りやすくなります。
4-3 深呼吸はリラックスモードへの近道
深呼吸で横隔膜をしっかり動かすと、副交感神経が優位になりやすく、筋緊張が和らぎます。以下のブログは深呼吸の好影響をまとめたブログです。合わせてご覧くださいませ。

4-4 早めの専門ケアで慢性化を防ぐ

「痛いけれど動けないわけではない」と我慢していると、身体の歪みや脳の痛み記憶が固定化し、慢性腰痛化のリスクが高まります。
国が認める資格を有する治療院で、身体の歪みや自律神経を整える施術を受けることが回復につながりますので、お勧めいたします。
5. まとめ

GW 後の腰痛増加は偶然ではなく、活動量ギャップ・脳疲労・環境ストレスによる自律神経のアンバランスが複合した必然的現象と考えられます。
連休を思い切り楽しむことは素晴らしいことですが、休暇から日常への“着地”をスムーズにするクールダウン期間を設け、ストレスと活動量を段階的に調整することが再発防止の鍵です。
もし痛みや張りが数日続く場合は、早めに専門家へご相談ください。
当院からのご案内
かんだ整骨院 では、腰痛・坐骨神経痛・メンタル不調など自律神経由来の症状も含めた総合的な治療を行っています。GW 後の不調でお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
【監修:柔道整復師 神田博行】
参考文献(一部抜粋)
- Airaksinen O. et al. “Low back pain: guidelines for its management.” European Spine Journal, 2023.
- Stubbs B. et al. “The association between psychological factors and low back pain.” Pain, 2022.
- van der Windt D. et al. “Physical activity change and low back pain: a cohort study.” BMC Musculoskeletal Disorders, 2021.